日照権とは建物の日当たりを確保する権利を指します。ただし、日照権に関しては法律で定められている権利ではないため、その保護のために建築基準法等で規制がなされています。
◆日照権には射線制限と日影規制の二つがある
●射線制限とは
射線制限とは、建物と建物の間に空間を確保することで、道路や隣地の日照・採光・通風を妨げないために、建築物の高さを制限することをいいます。
この射線制限もさらに「道路射線制限」「隣地射線制限」「北側斜線制限」の3種類に分別することができます。
・道路射線制限
接している道路の幅に基づいて、道路を挟んだ反対側の建物の日照権を確保するための制限をいいます。具体的には道路の反対側の境界線から上空に向かって一定の勾配を引いた斜線よりも下に建物を建てなければならないという制限です。
・隣地射線制限
隣地に面した建物部分の高さが20mもしくは31mを超える部分についての制限を指します。マンションやオフィスビルのような高さのある建物が建設される場合に制限を受けます。第一種および第二種低層住居専用地域、田園住居地域では、もともと建築することのできる建物の高さが10mまたは12mと制限をされているため、隣地射線制限は適用されません。
・北側斜線制限
北側隣地の採光や通風を確保するための制限です。北側の隣地の境界線もしくは北側に道路があるような場合に、その道路の反対側の道路と敷地の境界線から計測を行います。
●日影規制
中高層程度の建物を建築する際に、隣接する地域の日照権を確保するために1年でもっとも日が短い冬至の日を基準として、日陰を一定時間以上生じさせないと定めた制限となります。
これは建築がされる場所の用途地域と高さによって定められます。
◆どのような場合に日照権侵害が認められるか
建築基準法は、日照権侵害となる建築基準を定めているのみであり、実際に侵害された場合には、民法709条の不法行為により損害賠償請求を行います。
しかしながら、建築基準法を守って建設がされた建物に関しては、違法すなわち不法行為の名前にもある「不法」の状態とは言えないのではないかと思われます。
もっとも、適切な行為であっても継続的に続くことで、違法な侵害と同様の深刻な被害をもたらすことも考えられます。
そこで、「受任限度」という概念があります。適法な行為であればある程度その行為に対して我慢、受任をする必要がありますが、一定の限度を超えたものに対しては、違法として取り扱うという考え方です。
受任限度の判断基準としては以下のようなものがあります。
①被害の程度(遮光の程度や時間など)
②住んでいたのは原告と被告のいずれが先か
③隣地の建物は遮光に対して何か配慮がされているか
④隣地の建物は建築基準法の制限を満たしているか
⑤問題になっている用途地域は何か
日照権侵害の受任限度に関しては、固定された基準や数値などがあるわけではなく、ケースバイケースとなっているのでご注意ください。
山﨑夏彦法律事務所では、小田原出身の弁護士が、小田原市内の離婚問題、遺産相続、交通事故、不動産トラブル、刑事事件という多岐にわたる法律問題を取り扱っております。
お近くの建築物が日照権侵害にあたるのではないかと思われる方は、一度弁護士にご相談ください。真摯に対応させていただきます。
日照権とは?どのような場合に侵害が認められる?
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