結婚している夫婦においては、同居している場合、当然生活費は夫婦間で分担することになっています。これは、法律上の義務として民法にも条文で定められていることです。では、まだ離婚はしておらず婚姻関係にあるとしても別居している場合の生活費はどのように負担するべきなのでしょうか。
たとえ夫婦が別居していたとしても、法律上の婚姻関係にある限りは、原則として生活費は夫婦間で分担する義務があります。もっとも、婚姻の形骸化や、生活費を請求する側の帰責事由等によっては、生活費の分担義務は免除される場合も考えられます。
ここで問題となるのは、もともと一方の配偶者のみが生活費を負担していた場合です。このような負担状況にあった夫婦が別居をすると、生活費を必要とする配偶者が、負担する側の配偶者に対して、生活費の請求をしていくことになります。一方の配偶者は、請求をして生活費を受け取らなければならない状態にあるにもかかわらず、実際には生活費が支払わないというケースも多くあります。しかし、別居期間であっても生活費を分担する義務があるのですから、配偶者からの請求に対して生活費を支払わないというのは、夫婦間での義務に反していることになります。
支払う義務があるにもかかわらず支払われなかった生活費は、「未払金」といった形で、離婚する際に清算することができます。ここからは、別居中の生活費について、その算定方法を確認していきましょう。ここで注意しなければならないのは、もともと請求していなかった生活費については、さかのぼって請求することはできないという点です。請求していた分についてのみ、請求時から別居解消時もしくは離婚成立時までの生活費を請求することができます。
まず、別居期間の生活費の算定に必要な項目は次に掲げるものです。
①夫婦それぞれの年収
②子どもの人数・年齢
これらの項目をもとに算定していきますが、主に「婚姻費用算定表」というものを用いていきます。この算定表は、①②をもとにして、裁判所が統計的に費用の相場をまとめたものです。子どもの人数と年齢から、参考にする表を選択し、縦軸と横軸に夫婦それぞれの収入を照らし合わせて該当する箇所を探していきます。
また、自分で計算して算定する場合には、「標準算定方式」という計算式を利用します。計算手順は以下の通りです。
①夫婦の基礎収入を計算し、合計することで世帯収入を出す(a)
②夫婦それぞれの生活費指数を出す(生活費を払う側b/もらう側c)
③a×c/(b+c)をして、もらう側の必要額を出す
④払う側の基礎収入から、もらう側の必要額を引く
以上の方法により、別居中の生活費についてはある程度算定することが可能です。しかし、別居の形態等によってもケースバイケースといえます。細かい点について疑問がある場合には、一度弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。
山崎夏彦法律事務所では、離婚問題にかかわる幅広いご相談を承っております。別居中の生活費の算定方法等についてお悩みの方は、ぜひ当事務所までお気軽にご連絡ください。
別居中の生活費を算定するには
山崎夏彦法律事務所が提供する基礎知識
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