遺留分と寄与分は、どちらも相続において重要な制度で、遺留分は「最低限の取り分を保障する」仕組みであり、寄与分は「相続人の努力を正当に評価する」ための制度です。
とはいえ、「遺留分と寄与分、どちらを優先すべきか?」「どこまでの主張が認められるのか?」と疑問を感じる方もいらっしゃると思います。
本記事では、遺留分と寄与分の関係において実際に問題となる場面を紹介します。
遺留分とは
遺留分とは、被相続人がどのような遺言を残していたとしても、一定の法定相続人に保障される最低限の取り分です。
仮に遺留分を下回る財産しか取得できなかった場合、相続人は遺留分侵害額請求を行い、他の受遺者や受贈者に対して金銭での補填を求めることができます。
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の生前に介護や金銭的援助などを無償で行った、特別の貢献をした相続人に対し、その貢献に応じて相続分を加算する制度です。
寄与分は相続人間の協議で決めるのが原則ですが、話がまとまらない場合は家庭裁判所に調停や審判を申し立てることも可能です。
遺留分と寄与分の関係において問題になる場面
留分と寄与分の関係において問題になる場面は、以下の通りです。
遺留分を侵害するような寄与分を請求している
遺留分を侵害するような寄与分であっても、遺留分の請求の対象には基本的にはなりません。
というのも、遺留分対象となる資産は、生前贈与や遺言による遺贈に限定されているためです。
これは民法でも次のように定められています。
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
寄与分は、遺贈や生前贈与にはあたらないため、遺留分を考慮しない寄与分を各相続人に請求すること自体は可能です。
とはいえ、寄与分の請求が認められるには、遺産分割協議で各相続人の同意を得るか、訴訟などで裁判所から「相続人の行った特別な貢献に対して請求額が妥当である」と認めてもらう必要があります。
寄与分の請求をめぐり争いになった場合、遺留分を超える高額な寄与分が認められるとは考えにくいといえます。
遺留分の請求に対して寄与分を主張する
遺留分侵害額請求を受けた相続人が「自分は寄与したから多く受け取って当然だ」と寄与分を主張し反論する場面があります。
しかし、遺留分の算定は贈与や遺贈が対象であるため、寄与分の請求とは別問題です。
したがって、このようなケースで寄与分を主張したいのであれば、遺留分侵害額請求と分けて、請求しなければなりません。
まとめ
寄与分と遺留分はそれぞれ独立した制度でありながら、実際の遺産分割においては密接に関係しており、法的トラブルの原因となることがあります。
特に、「寄与分が遺留分を侵害するケース」や「遺留分の請求を寄与分を理由に拒否するケース」は生じやすく、相続人間での対立が深まる要因にもなりかねません。
寄与分や遺留分に関するトラブル解決には、法律的な専門知識が高いレベルで要求されます。
相続をめぐる複雑な問題でお悩みの方は、山崎夏彦法律事務所までお気軽にご相談ください。